こんにちは!今回は、機械安全の国際規格であるIEC 62061のセクション7.6について解説を行います。このセクションでは、サブシステムのPFH(危険故障の平均頻度)について説明されています。
概要
PFHは、機械安全システムの信頼性を評価するための重要な指標であり、セクション7.6ではその決定方法について説明されています。本解説では、以下の項目について解説します。
- 一般的なPFHの決定に必要なパラメータ
- PFHを推定する方法
- 共通原因故障(CCF)の寄与を推定する簡略化されたアプローチ
一般的なPFHの決定に必要なパラメータ
PFHは、機械安全システムの信頼性を評価するための重要な指標です。PFHを決定するためには、以下のパラメータが必要です。
- サブシステムアーキテクチャ
- DC(診断カバレッジ)およびテスト間隔
- CCF(共通原因故障)
- サブシステム要素のλD(危険故障率)またはMTTFD(危険故障までの平均時間)
- 有用寿命
例えば、産業用ロボットの安全関連サブシステムの場合、アーキテクチャは、モータードライブやセンサー、制御装置などの構成要素から構成されます。DCは、危険故障を検出する能力を表し、例えば90%なら、90%の確率で危険故障を検出できることを意味します。テスト間隔は、故障検出テストを実施する間隔を示します。
有用寿命は、サブシステムの最大使用期間を示す指標で、通常20年が目安とされています。例えば、産業用ロボットであれば、一般的に20年間稼働することが想定されます。
サブシステムのPFHを推定する方法
附属書Hでは、PFHを計算するための簡略化されたアプローチとして、以下の2つの方法が提案されています。
- 割り当てテーブルアプローチ
- 数式アプローチ
割り当てテーブルアプローチでは、サブシステム要素ごとに故障率が割り当てられ、それらを組み合わせることでサブシステム全体のPFHを推定します。数式アプローチでは、故障率、診断カバレッジ、共通原因故障などのパラメータを用いた数式を利用してPFHを計算します。
また、フォールトツリー分析、マルコフモデル、信頼性ブロック図などのモデリング手法も使用可能です。これらの手法を用いることで、より詳細な故障シナリオや条件を考慮したPFHの評価が可能になります。
共通原因故障(CCF)の寄与を推定する簡略化されたアプローチ
サブシステムのPFHを推定するためには、CCFに対する感受性も考慮する必要があります。CCFの発生確率は、技術、アーキテクチャ、アプリケーション、および環境の組み合わせに依存します。付録Eの使用は、多くの種類のCCFを回避する上で効果的です。
例えば、同じ製造元からの同じロットのセンサーを複数使用した場合、製造上の欠陥があると、同時に故障する可能性が高くなります。このようなCCFは、異なる製造元や異なるロットのセンサーを組み合わせることで回避できます。
まとめと全体のポイント
IEC 62061のセクション7.6では、サブシステムのPFHの決定方法について説明されています。このセクションを理解することで、機械安全システムの信頼性を評価し、より適切な設計や保守計画を立てることができます。
全体のポイントは以下の通りです。
- PFHは機械安全システムの信頼性評価に重要な指標であり、セクション7.6では、その決定方法について説明されています。
- PFHを決定するためには、サブシステムアーキテクチャ、DC、テスト間隔、CCF、および有用寿命などのパラメータが必要です。
- PFHを推定する方法として、割り当てテーブルアプローチや数式アプローチが提案されており、フォールトツリー分析、マルコフモデル、信頼性ブロック図などのモデリング手法も使用可能です。
- サブシステムのPFHを推定するためには、CCFに対する感受性も考慮する必要があります。CCFの発生確率は、技術、アーキテクチャ、アプリケーション、および環境の組み合わせに依存します。
機能安全の知識が向上することで、信頼性の高いシステムを設計し、製品の安全性と品質を向上させることができます。IEC 62061の他のセクションも研究することで、より包括的な機械安全知識を身につけることができます。
最後に、セクション7.6は、機械安全規格IEC 62061の一部に過ぎません。他のセクションや関連規格(例えば、ISO 13849やIEC 61508など)も確認することで、機械および制御系の設計者としての専門知識を深めることができます。
これからも機能安全に関する情報や知識を学び続け、安全で信頼性の高い産業機械を設計しましょう。それでは、次回の解説記事でお会いしましょう!