ISO 13849-1 に新たに追加された 5.5「SRP/CSのサブシステムへの分解(Decomposition of SRP/CS into subsystems)」は、機械の安全関連制御システム(SRP/CS)の設計において重要な考え方です。本記事では、この新規追加項目について解説します。
そもそも SRP/CS とは?
SRP/CS(Safety-Related Parts of Control Systems)とは、機械の安全機能を担う制御システムの一部を指します。たとえば、非常停止ボタン、セーフティライトカーテン、インターロック付きガードシステムなどが含まれます。
従来の ISO 13849-1 でも、SRP/CS の設計に関する要件は詳しく規定されていましたが、今回の改訂で「サブシステム」という概念が明確化されました。
5.5「SRP/CSのサブシステムへの分解」とは?
SRP/CSは通常、複数の機能を組み合わせて構成されます。この新たな規定では、SRP/CS を「サブシステム」に分解し、それぞれの役割を明確にすることで、安全性の評価や設計をより適切に行えるようにすることを目的としています。
サブシステムとは?
サブシステムとは、SRP/CS を構成する部分のうち、ある特定の機能を担う単位のことです。たとえば、
- センサ(例:ガードスイッチ、光電センサ)
- 論理・処理ユニット(例:PLC、安全リレー)
- 出力・電力制御要素(例:電磁弁、コンタクタ)
- 機械アクチュエータ(例:モータ、シリンダー)
これらをサブシステムとして定義することで、それぞれの部分の安全要件や故障時の影響を明確にできます。
サブシステムを定義するメリット
- 安全要件の明確化
- 各サブシステムの入力、出力、機能、および求められる安全要件(機能的要件・信頼性要件)を明確にできます。
- 再利用性の向上
- 既に検証済みのサブシステムを流用することで、新たなSRP/CS の開発を効率化できます。
- リスク評価の簡略化
- サブシステムごとに危険故障を分析し、全体のリスク評価を段階的に進められます。
- 安全性の向上
- サブシステム単位で安全対策を適用することで、全体の安全性を高めることができます。
実際の適用例
例えば、危険エリアへのアクセスを防ぐための安全システムを考えてみましょう。
- センサ(入力)
- 光電センサ(AOPD)が作業者の手の侵入を検知
- 論理処理ユニット
- PLC が信号を受け取り、安全リレーを介して制御を行う
- 出力制御
- 安全リレーが電磁弁を遮断し、シリンダーの動作を停止
- 機械アクチュエータ(出力)
- シリンダーが動作を停止し、危険を回避
このように、安全機能全体をサブシステムに分けて設計することで、各要素の役割が明確になり、設計やリスクアセスメントが容易になります。
まとめ
ISO 13849-1:2023 で追加された「SRP/CSのサブシステムへの分解」は、安全関連制御システムを設計する上で、
- 構造を明確にする
- 既存のサブシステムを再利用する
- リスク評価を段階的に進める といった利点をもたらします。
機械安全を考える際には、SRP/CS を単体としてではなく、サブシステムに分解して考えることが、より安全で効率的な設計につながります。今後、ISO 13849-1:2023 に対応した設計を行う際には、この新しい考え方を活用してみましょう!