こんにちは。今日はサイバーレジリエンス法(Cyber resilience Act)のArticle 11について解説を行います。これは、デジタル要素を持つ製品の製造者に対する報告義務を定めたもので、製品の安全性と信頼性を向上させる上で非常に重要です。
1.製品の脆弱性の報告
製造業者は、製品の脆弱性を認識した場合、遅延なく24時間以内に、その情報をENISA(欧州連合の情報セキュリティ庁)に報告しなければならないと規定されています(第1項)。その報告には脆弱性の詳細や、可能であれば対策についての情報が含まれなければなりません。これはENISAがその情報を適切な部署に転送し、関連情報を市場監視当局に通知するためです。これにより、セキュリティインシデントに迅速に対応し、悪用から製品を守るための一環となります。
2.セキュリティインシデントの報告
同様に、製造業者がデジタル要素を含む製品のセキュリティに影響を及ぼすインシデントを認識した場合も、これをENISAに24時間以内に報告しなければならないと規定しています(第2項)。この報告には、インシデントの重大性や影響、そして必要に応じて不法行為や悪意のある行為によるものかどうか、国境を越えて影響を及ぼす可能性があるかどうかについての情報が含まれなければなりません。
3.ユーザーへの通知
製造業者はデジタル要素を含む製品のユーザーに対して、インシデントについて、そして必要な場合はユーザーがインシデントの影響を軽減するために展開できる是正措置について、認識した後、不必要な遅延なく通知しなければならないと規定しています(第4項)。これはユーザーが自身を守るための適切な行動をとることができるようにするためです。
4.通知のフォーマットと手順
法的な規定では、欧州委員会が通知のタイプ、フォーマット、手順をさらに明確化するために実施法を用いることができると明記されています(第5項)。つまり、製造業者は具体的な報告要件や形式についての更新情報に注意を払い、それに従うことが求められます。
5. 製品の部品における脆弱性の報告
最後に、製品に組み込まれた部品(オープンソースのコンポーネントを含む)に脆弱性を発見した場合、製造業者はその脆弱性を部品を管理している人や組織に報告しなければなりません(第7項)。例えば、ある制御システムのファームウェアにセキュリティ脆弱性が見つかった場合、そのファームウェアを開発・維持している企業にその問題を報告する義務があります。これは、全体のセキュリティを高めるための重要なステップで、セキュリティの問題が他の製品やシステムに広がるのを防ぐための一環となります。
これらの要件は、製造業者にとっては一見すると大きな負担かもしれませんが、実際にはその製品の安全性と信頼性を大幅に向上させる可能性があります。脆弱性やセキュリティインシデントを迅速に報告し、対策を講じることで、製品に対するユーザーの信頼を高め、より長期的な成功を確保することが可能です。
サイバーレジリエンス法のArticle 11は、製造業者に対する報告義務を定めたもので、我々がデジタル要素を含む製品を安全に設計・製造するための重要なガイドラインとなっています。これらの義務を理解し、適切に適用することで、我々は製品の安全性とユーザー体験を向上させるだけでなく、未来の問題に対する準備を進め、さらには市場での競争力を高めることができます。
まとめると、Article 11は製造者に以下の義務を課しています:
- 製品の脆弱性について、適時にENISAに報告する。
- セキュリティインシデントについて、適時にENISAに報告する。
- ユーザーに対して、インシデントとその対策について適時に通知する。
- 製品の部品(オープンソースを含む)に脆弱性がある場合、その部品を管理している人や組織に報告する。
それでは、次回のブログ記事でお会いしましょう。安全な設計と製造を心掛け、製品の信頼性を常に向上させるようにしましょう。